あなたは、見ているようで見ていないかもしれません。本書は、クリエイティブな仕事に必要な「観察力」について、具体的な方法や練習を紹介した書籍です。一流のクリエイターが実践する「見る力」を学びましょう。
目次
なぜ、「観察力の鍛え方」か?
ロジカルシンキングだけでは差別化が難しい
多くのビジネスパーソンが周囲との差別化に勤しんでいると思います。必死に情報収集し、様々なフレームワークを駆使して分析しているのではないでしょうか?
しかし、近年急速にロジカルシンキングのフレームワークはコモディティ化しています。
従って、いくら情報を集めても同じような解釈をしていては、結局同じ結論に達し差別化ができなくなるのです。
人とは違った視点で物事を見ている人が新たな価値を生み出している
そんな中でも価値を生み出し続けている人がいると思います。
例えば、最近人気のイェール大学助教の成田悠輔さんです。やや大げさに言っているところもありますが、斬新な切り口にハッとさせられます。
彼の場合、さらにその切り口のエビデンスを示しているところがすごいところですが、他者とは異なる視点でもって立案した仮説が先にあると思います。
自分も玉石混交の情報の海から価値ある情報を見つけられるようになりたい
触れている情報の量そのものが違うことも重々承知しています。
それでも、その中から価値ある情報を見つける観察眼が私も欲しいです。
そのために観察力を鍛えたい
残念ながら私自身は人並みの観察眼しかないです。なので、観察力の鍛え方を知りたくなりました。
だから、私は本書を手にとりました。
この本から私が知りたいことは以下の3点です
- そもそも観察力とは何か?観察力が高い人は具体的に何が違うのか?
- どうすれば観察力を鍛えることができるのか?
- 観察力の向上はどのように実感出来るのか?
本書の概要
著者・出版社・発行日・副題
著者
コルク代表の佐渡島庸平(さどじま ようへい)さん
出版社・発行日
SBクリエイティブ(2021/09/08)
副題
1流のクリエイターは世界をどう見ているのか
コアとなる主張
人生は長い。
インプットの質が良ければ、最終的にアウトプットの質も良くなる。
インプットの質を高めるのが「観察力」。
「観察力」のちょっとした差が、大きな差を生み出している。
本書の要約
本書は、観察力を向上させるための方法論が記述された書籍です。
「観察」とは何か?を著者の編集者としての経験を踏まえながら仮説を立てるところから始まります。そして、「いい観察は、問いと仮説の無限ループが起きる」としています。
いい観察は、問いと仮説の無限ループが起きる
本書では、観察力を向上させる方法ではなく、観察を阻害する要因を無くす方法に着目しています。従って、内容は「観察力の鍛え方」というより「観察を阻害する要因を軽減する方法」の方がニュアンスは近いです。
著者は、観察を阻害する要因は大きく3つあるとしています。
- 認知バイアス
- 身体・感情
- コンテクスト
この3つを総称して、「メガネ」とよんでいます。
『「メガネを外す方法知る」ではなく「メガネは外せないという前提のもと、理解すること」が観察を促進させる。』という信念で、メガネの理解に向けた説明をしています。
「メガネ①(認知バイアス)の理解」
「確証バイアス、ネガティビティバイアス、同調バイアス、ハロー効果、生存者バイアス、根本的な帰属の誤り、後知恵バイアス・正常性バイアス」の存在を説いています。
「メガネ②(身体・感情)の理解」
『同じ情報を受け取っても、感情によってその処理の仕方に大きな差が生まれる。自分が何に注意を向けているかが理解できれば、感情により観察が歪むことがなくなる。』という仮説のもと、感情の類型について詳しく書かれています。
「メガネ③(コンテクスト)の理解」
『観察対象そのものではなく、周囲との関係性に目を向けるべし』という仮説のもと、「(良い物語をつくるという前提で)人間関係の関係性を理解する方法論」を述べていいます。
そして最後に、観察力を磨いた先に待っている世界観についての著者の考察があります。
本書の目次
- はじめに
- 第1章:観察力とは何か? [観察をめぐる旅への誘い]
- 第2章:「仮説」を起点に観察サイクルを回せ [5つの具体的アクション]
- 第3章:観察は、いかに歪むか [認知バイアス]
- 第4章:見えないものまで観察する [感情類型と関係性]
- 第5章:あいまいのすすめ [正解を手放し判断を保留]
- おわりに
解ったこと(期待に対する解)
問①:そもそも観察力とは何か?観察力が高い人は具体的に何が違うのか?
いい観察は、ある主体が、物事に対して仮説を持ちながら、客観的に物事を観て、仮説とその物事の状態のズレに気づき、仮説の更新を促す
一方、悪い観察は、仮説と物事の状態に差がないと感じ、わかった状態になり、仮説の更新が止まる。
「観察力の鍛え方」 第1章
観察は、脳の中にある認知(意識)を変える。同時に、認知(意識)は、観察の仕方に大きな影響を与える。
「観察力の鍛え方」 第1章
仮説を言語化し、意識することで、無意識的な認知も少しは意識出来る。
「観察力の鍛え方」 第1章
良い観察は、既存の認知(意識)に揺さぶりをかけるものと言えそうである。
「観察力の鍛え方」 第1章
仮説を言語化することで、認知(意識)を知覚することが出来るということか。
これは自分に閉じた話ではなく、言語化することで他者の認知も知覚することが出来るのかもしれないね。
成田さんはじめ、観察力が高い人は他者の認知(意識)までも揺さぶることが出来るとも言えそうだ。
忠犬SE
これらを自分なりにまとめると・・・
- 内部状態(無意識含む自身の認知)を知覚する(言語化して解釈する)と
意識下に「問い」が生まれる - 「問い」に対して「仮説」を立案する
- 「仮説」の下、外部情報を選択して知覚する(言語化して解釈する)
=観察する - 良い観察の場合、内部状態を更新する
- 内部状態の知覚結果と「仮説」のギャップが新たな「問い」を生む
- ②〜⑤を繰り返す
※メガネ(認知バイアス、身体・感情、コンテクスト)を通して「情報選択」と「解釈」を行う
言語化された「他者の仮説」を解釈する(知覚する)ことが刺激となって
内部状態(無意識含む自身の認知)を更新する。
問②:どうすれば観察力を鍛えることができるのか?
観察を阻害するといったとき、ここで紹介した3つの要因-認知バイアス(=脳)、身体と感情(=感覚器官)、コンテクスト(=時空間)がバグを起こしやすいと意識しているだけで観察の精度は変わってくる。
僕は、この3つを総称して、「メガネ」と読んでいる。
(中略)
メガネを理解することが、観察を促進する。短所が長所になるように、メガネは武器になる。
「観察力の鍛え方」 第1章
「観察による問いと仮説の無限ループ」のイメージを理解して、観察と世界を観るメガネの全体感を掴み、メガネ(認知バイアス、身体と感情、コンテクスト)の理解に努めよう
忠犬SE
問③:観察力の向上はどのように実感出来るのか?
1章で、「いい観察は、問いと仮説の無限ループが起きる」と定義した。無限ループが起きていると、いつまでもわかった状態がこない。「わかった!」と思っても、いい観察によって、すぐに次の「わからない!」がきてしまう。いい観察が起きていると、自然にあいまいな状態にい続けてします。
「観察力の鍛え方」 第5章
スパイラル状に発展し続けていく感じが、以前読んだ「使える弁証法」を想起させました。
気づき/これからやること
言葉を使うことで、自分の観察のいい加減さを自覚できる。
- 何はともはれ「言葉」にする(安宅さんも暦本さんも書籍で主張している)
感情は、ヒトという動物にとって、最も合理的なセンサーだという考え方もある
- 本書を読んで感情を理解し、自身の感情を認知するスキルを向上させていこう
- 一種のセンサーだと認識する。そうすれば、振り回されることはなくなる
本能は、人が無意識の自動操縦で生きられるように導いてくれる。
- 気づいていないだけで無意識の自動操縦は多々あるということをまずは理解しよう
- 意識して無意識を意識するクセを身に着けよう
まとめ
本記事では、「観察力の鍛え方」を紹介しました。
記事の重要ポイントは以下です。(重要ポイント多すぎ笑)
- 観察とは、外部情報を入力に内部状態である無意識含む自身の認知を変化させること
- 内部状態(無意識含む自身の認知)は、言語化することで観測(知覚)出来る
- 良い観察は、知覚された内部状態(無意識含む自身の認知)を更新し、問いと仮説の無限ループを生じさせる
- 観察力とは、内部状態を変化させる能力のこと
- 観察力が高い人は、自身の仮説を言語化するだけで、他者の内部状態(認知)までも揺さぶることが出来る
- 外部情報の内部状態(無意識含む自身の認知)への変化を阻害する3つの要因(認知バイアス、感覚器官、コンテクスト)を理解することが観察能力の向上に寄与する
- 観察力が向上すると常に新たな問いが生まれ続けるため思考停止に陥らない
- 思考停止に陥りがちのとき、観察力は低下している
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