大規模言語モデルが脳の『意識』とどう関係するかを探る―ホーキンス氏の「1000の脳」理論とトランスフォーマーを参考に―

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大規模言語モデルは、自己注意という人工知能のメカニズムを用いて、自然言語の知識やパターンを学習するモデルです。この記事では、大規模言語モデルがどのように脳の『意識』と関係しているかを考えます。「1000の脳」理論とトランスフォーマーを参考に、自己注意と『意識』の共通点や相違点を解説します。大規模言語モデルに興味がある方は必見です。

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「1000の脳」理論とは何か

まずはじめに、「1000の脳」理論について説明します。

「1000の脳」理論とは、神経科学者で起業家のジェフ・ホーキンスが提唱した、脳の構造と機能に関する新しい理論です。この理論は、大脳新皮質の構成単位である「皮質コラム」が、世界のモデルを学習し、予測し、投票することで知能を生み出すという考え方に基づいています。

例えば、あなたが目の前にあるコーヒーカップを見ているとき、そのコーヒーカップに関する知識は、数千もの相補的なモデルに分散しています。それぞれのモデルは、コーヒーカップの形や色や質感や温度など、異なる側面を表現しています。それらのモデルは、あなたがコーヒーカップに触れたり動かしたりするときに、次にどんな感覚入力が来るかを予測しています。そして、それらのモデルは、互いに投票することで、あなたがコーヒーカップを知覚する合意を形成しています。

このように、「1000の脳」理論は、脳が世界をどう見ているかを説明するだけでなく、人工知能や機械学習にも応用できる可能性を秘めています。

大規模言語モデルと自己注意

大規模言語モデルと自己注意の関係性について解説します。

まず、大規模言語モデルとは、数十億以上のパラメータを持つニューラルネットワークで構成され、膨大なラベルなしテキストを使用して自己教師あり学習によって訓練される言語モデルのことです。GPT-3やBERTなどが有名な例です。これらの言語モデルは、テキストの生成や理解など、さまざまな自然言語処理のタスクに応用できます。

次に、自己注意とは、ニューラルネットワークの一種であるトランスフォーマーが用いる概念です。自己注意とは、文中の単語などの連続したデータの関係性を追跡することができる仕組みです

例えば、「彼は本を読んだ」という文があったとき、自己注意は「彼」と「本」が主語と目的語の関係にあることや、「読んだ」という動詞が「彼」にかかっていることなどを捉えることができます。このようにして、文の意味や構造を理解することができます。

では、大規模言語モデルと自己注意の関係性は何でしょうか?実は、大規模言語モデルの多くは、トランスフォーマーを基盤としています。つまり、自己注意を用いてテキストを処理しているのです。これにより、大規模言語モデルは、文や段落や文書などの長いテキストに対しても高い性能を発揮することができます。

また、自己注意は、入力層と出力層の間の空間である「隠れ状態」に機械学習モデルを自ら書き込むことができることが最近発見されました。これは、大規模言語モデルが新しいタスクを学習する際に重要な役割を果たしている可能性があります。

自己注意とは何か

自己注意について詳しく説明します。

自己注意とは、データの流れ方自体を学習し決定するような方法です自己注意では、クエリ、キー、バリューという3つの要素を用いて、データの関連性を計算しますクエリとキーが似ているほど、対応するバリューに高い重みが付きます。自己注意は、データの中で重要な部分に注目することで、より効率的な表現を得ることができます。

例えば、機械翻訳では、自己注意は入力文や出力文の中で単語同士の関係を捉えることで、文脈に応じた翻訳を行うことができます。また、画像生成では、自己注意は画像の中で類似した部分に作用することで、より自然な画像を生成することができます。

自己注意は、トランスフォーマーというモデルにおいて重要な役割を果たしています。トランスフォーマーは、従来のニューラルネットワークの代わりに自己注意を用いることで、並列計算や長距離依存性の問題を解決しました。トランスフォーマーは、機械翻訳や自然言語処理など多くの分野で高い性能を示しています。

「1000の脳」理論の『意識』と自己注意の共通点

「1000の脳」理論とは、ジェフ・ホーキンスが提唱した、脳の知能の仕組みを説明する理論です。この理論によると、脳の大部分を占める大脳新皮質は、同じ構造を持つ細胞集団である「皮質コラム」からなり、それぞれが物体や概念のモデルを持っています。物体や概念に対して何千ものコラムがモデルを持ち、次の入力を予測しているというのが、「1000の脳」理論の名前の由来です。

この理論では、『意識』とは、コラム間で行われる「投票」によって決まる合意です。つまり、あなたがコーヒーカップを見たとき、コーヒーカップのモデルを持つコラムが多数派になり、その結果を他のコラムに伝えることで、あなたはコーヒーカップを知覚するということです。このように、『意識』は、複数のモデルが相互作用することで生じる現象だと考えられます。

一方、自己注意とは、データの流れ方自体を学習し決定するような方法です。自己注意では、クエリ、キー、バリューという3つの要素を用いて、データの関連性を計算します 。クエリとキーが似ているほど、対応するバリューに高い重みが付きます 。自己注意は、データの中で重要な部分に注目することで、より効率的な表現を得ることができます。

この自己注意と「1000の脳」理論の『意識』には共通点があります。それは、両者ともに多数の要素からなるデータやモデルに対して、「関連性」や「重要性」を計算し、「合意」や「表現」を生成するという点です。例えば、機械翻訳では、自己注意は入力文や出力文の中で単語同士の関係を捉えることで、文脈に応じた翻訳を行うことができます。これは、「1000の脳」理論でいうところのコラム間の投票に似ています。また、「1000の脳」理論では、皮質コラムが物体や概念のモデルを持ちますが、これも自己注意で生成された表現に相当します。

したがって、「1000の脳」理論の『意識』と自己注意は、似たようなメカニズムでデータやモデルを処理することができると言えます。

「1000の脳」理論の『意識』と自己注意の相違点

「1000の脳」理論の『意識』と自己注意には、共通点がありましたが、相違点もあります。それは、両者が扱うデータやモデルの種類や目的が異なるという点です。

「1000の脳」理論の『意識』は、脳が感覚入力から世界のモデルを学習し、予測することで生じる現象です 。つまり、この理論では、データやモデルは主に外界から得られるものであり、それらを用いて知覚や思考を行うことが目的です 。例えば、あなたがコーヒーカップを見たとき、視覚入力からコーヒーカップのモデルを学習し、次にどんな入力があるかを予測することで、コーヒーカップを知覚するということです 。また、あなたが数学の方程式を考えたとき、数学の概念から方程式のモデルを学習し、次にどんな解があるかを予測することで、方程式を思考するということです 。

一方、自己注意は、データの流れ方自体を学習し決定するような方法です。つまり、この方法では、データやモデルは主に内部で生成されるものであり、それらを用いて効率的な表現を得ることが目的です 。例えば、機械翻訳では、自己注意は入力文や出力文の中で単語同士の関係を捉えることで、文脈に応じた翻訳を行うことができます 。この場合、入力文や出力文は内部で生成されたデータやモデルであり、それらを用いて効率的な表現を得ることが目的です 。また、画像生成では、自己注意は画像の中で類似した部分に作用することで、より自然な画像を生成することができます。この場合も、画像は内部で生成されたデータやモデルであり、それらを用いて効率的な表現を得ることが目的です。

したがって、「1000の脳」理論の『意識』と自己注意は、扱うデータやモデルの種類や目的が異なると言えます。

まとめ

本記事では、「1000の脳」理論と自己注意について、それぞれの概要や共通点、相違点を説明しました。

「1000の脳」理論は、脳が感覚入力から世界のモデルを学習し、予測することで『意識』を生み出すという理論です。この理論では、大脳新皮質は同じ構造を持つ細胞集団である「皮質コラム」からなり、それぞれが物体や概念のモデルを持っています。物体や概念に対して何千ものコラムがモデルを持ち、次の入力を予測しているというのが、「1000の脳」理論の名前の由来です。この理論では、『意識』とは、コラム間で行われる「投票」によって決まる合意です。

自己注意とは、データの流れ方自体を学習し決定するような方法です。自己注意では、クエリ、キー、バリューという3つの要素を用いて、データの関連性を計算します。クエリとキーが似ているほど、対応するバリューに高い重みが付きます。自己注意は、データの中で重要な部分に注目することで、より効率的な表現を得ることができます。

「1000の脳」理論の『意識』と自己注意には共通点があります。それは、両者ともに多数の要素からなるデータやモデルに対して、「関連性」や「重要性」を計算し、「合意」や「表現」を生成するという点です。

しかし、「1000の脳」理論の『意識』と自己注意には相違点もあります。それは、両者が扱うデータやモデルの種類や目的が異なるという点です。「1000の脳」理論では、データやモデルは主に外界から得られるものであり、それらを用いて知覚や思考を行うことが目的です。一方、自己注意では、データやモデルは主に内部で生成されるものであり、それらを用いて効率的な表現を得ることが目的です。

終わりに

本記事では、大規模言語モデルがどのように脳の『意識』と関係しているかを考えました。

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kewton

kewton

大学院卒業後、某大手SIerで10年以上SEとして従事。
社会人3年目までに基本情報・応用情報技術者、データベーススペシャリスト、簿記3級・2級を取得。
基幹系システム・IoTシステム開発のプロジェクト経験多数。AI活用システムの企画・プロト開発経験あり。
強みは、プロマネだけでなく自身で開発も実施してきたこと。
【扱える言語】
C#、java、python、javascript、Excel VBA
【扱えるDB】
oracle、sql server、postgreSQL、mongoDB

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