【書籍紹介】善と悪の経済学―ギルガメシュ叙事詩、アニマルスピリット、ウォール街占拠[トーマス・セドラチェク]

3 min

経済学は物語から学問へと変化してきた歴史を知っていますか?チェコの気鋭の経済学者が、神話や哲学から現代経済学の限界と可能性を探る話題作「善と悪の経済学」を紹介します。この本は、経済学がどこから来て、どこへ向かうべきかを問いかける、知的冒険の旅に誘います。

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こんな人におすすめ

中堅

中堅

同じ組織にずっといると視点が凝り固まって、画一的な見方しかできなくなる。型にはまらない見方がほしい

なぜおすすめ?

ギルガメシュ叙事詩や聖書など西洋人には馴染みのある物語を知っていることが前提となっていて、正直なところ日本人には難解だと思う。

さらに、著者の学位論文(科学的ではないとして却下された)がベースとなっているこもあり、根拠もそれほど明確ではない(なぜ?と思うポイントがやや多く腹落ちし辛い)んだ。そういう意味で二重の意味で読み解くのが難しい書籍になっているよ。

ただ、本書で挑戦している取り組みはすごく興味深くて、神話や宗教と科学を「良い暮らし、良き人生」に向けた物語としておいて、それらに共通している考えを見つけるという視点は、すごく面白い。本書を完璧に理解することは難しくても、この視点を得られただけで今後の物事の見方が豊かになると思うよ。

忠犬SE

忠犬SE

経済学の研究が科学の時代になってから始まったとと考えるのはまちがっている。

昔の人々もいまの私たちと同じような問いを発していた。

その問いに最初に答えたのは、神話と宗教だった。

今日ではその役割を科学が果たしている。

したがって両者のつながりを見つけるには、古代の神話や哲学に深く分け入らなければならない。

『善と悪の経済学』 序章

読み終わったあとどう感じた?

ギルガメシュ叙事詩を始めとして古代の物語を単なる物語としてではなく寓話として読んで、古代から変わらない人間社会の本質への理解を深めたい。

とりあえず、ギルガメシュ叙事詩を購入してみるか。

忠犬SE

忠犬SE

結局、どんな本?

本書の背景

トーマス・セドラチェクとは

  • 1977年生まれ。チェコ共和国の経済学者。
  • チェコスロバキア貿易銀行にてマクロ経済担当のチーフストラテジスト、
    ならびにチェコ共和国国家経済会議の前メンバーを務める。
  • プラハ・カレル大学在学中、20代で初代大統領ヴァーツラフ・ハヴェルの経済アドバイザーとなった。
  • 本書の他に『続・善と悪の経済学 資本主義の精神分析』『改革か革命か 人間・経済・システムをめぐる対話』を執筆

本書について

  • チェコ共和国初代大統領のまえがきから始まる
  • カレル大学の学位論文として提出したが科学的価値に疑問として拒否されたものを改訂して出版
  • 2009年にチェコで出版。ベストセラー
  • 出版後すぐに15カ国に翻訳
  • 2012年にドイツのベスト経済書賞受賞
  • 2015年、日本で出版

セドラチェクの問いは、ステレオタイプを打ち破る。彼は視野の狭い専門化にとらわれず、さまざまな学問分野を縦横無尽に飛び回る。経済学の境界を軽々と飛び越え、歴史、哲学、心理学、古代の神話を渉猟(しょうりょう)する。それは心躍る冒険というだけでなく、二十一世紀の世界を理解するために必要なことだ。

(中略)

私の大統領執務室では、セドラチェクは若い世代に属しており、現代の世界が直面する問題に新しい見方をもたらすと期待されていた。彼らは、四十年におよぶ全体主義的共産主義体制の負の遺産も背負っていない。私の期待は裏切られなかったと感じる。読者もきっと、この本のすばらしさに気づくにちがいない。

(チェコ共和国初代大統領、二〇一一年一二月没)

『善と悪の経済学』 まえがき

本書の概要

著者は「昨今(おそらく90年代〜00年代)の経済学は、さして意味もなく応用も利かない機械論的・分配論的計量経済学モデルに髄しているのでは無いか?」と危惧している。

なぜなら、学問が「名言された信念の体系」であるならば、表舞台にでてこない信念、理論や学説の中で無言の前提として支配的な役割をはたしている観念はどのようなものかを見失っているからである。これらを、現在の経済学の枠を超えて知らなくてはいけないと考えている。

そこで、『経済学とは「良い暮らし、良き人生」についての寓話である』 という前提を置いた。

経済学をこのように考えると、神話や宗教のようにこれまで経済学とはみなされなかったことも経済学の一部とみなすことが出来る。一方、厳密なモデルに基づく現代の経済理論は、別の言葉(おそらくは数式)で語られたメタ物語であると言える。

つまり、神話や宗教から経済を見出し歴史をたどることができ、どのように発展してきたかがわかり、経済学の本質がわかる。そして、本書は、経済にまつわる人間の理解がどのように発展したかを突き止め、メタ経済学としてそれを経済学に反映することを目的としている。

本書は二部構成になっている。前半は「寓話の中のメタ経済学」、後半は「経済学の中のメタ経済学」についてである。

まとめると、本書の概要は下図のようになる。

【付録】今回紹介出来なかった本書のキーワード

  • ギルガメシュ叙事詩
  • アニマルスピリット

【付録】気になった

本書には、「どんな経済学も、結局のところは善悪を扱っている」という記述がある。なんとなくそんな感じはするのだが、なぜそう言い切れるのか?いまいち腹落ちしない。これについてのロジックをいつかしっかりと考えたいと思う。

【付録】その他おすすめの書籍

参考

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kewton

kewton

大学院卒業後、某大手SIerで10年以上SEとして従事。
社会人3年目までに基本情報・応用情報技術者、データベーススペシャリスト、簿記3級・2級を取得。
基幹系システム・IoTシステム開発のプロジェクト経験多数。AI活用システムの企画・プロト開発経験あり。
強みは、プロマネだけでなく自身で開発も実施してきたこと。
【扱える言語】
C#、java、python、javascript、Excel VBA
【扱えるDB】
oracle、sql server、postgreSQL、mongoDB

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